黒米揚げ 味付けはシンプルに

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黒米との出会い

黒米を使った煎餅の販売を始めたのは、今から十数年前のこと。
きっかけは、お米の問屋さんからの紹介でした。
小さな米袋を片手に、
「これ黒米っていう、うまいお米なんだけど、今少し余っちゃってね。富士見堂さんのとこでなんとかできないかなぁ」
今でこそ健康のために黒米など雑穀を食べる方が増えていますが、当時は販売しているお店も少なく、黒米料理や黒米のお菓子も大変珍しい状況でした。
職人も黒米についてはほとんど知識がなかったため、どういうお米なのか、これをお煎餅にするにはどうしたらいいのか、まったくの手探り状態。

がんこ×がんこで「うまい!」煎餅に

調べてみると、黒米の栽培には大変な手間ひまがかかることが分かりました。
お米の等級を検査する際、1粒でも黒いお米が混ざっていたら、どんなに良質なお米でもその米袋全てが等級外とされてしまうのだそうです。
白いうるち米の田んぼに、黒米の田んぼで使ったトラクター等の機械を入れてしまうと、タイヤに着いていたり、機械のすきまに入った黒米が混ざり、白いお米の中に黒米が育ってしまいます。それを手作業で取り除くには大変な手間がかかります。

このため、黒米を作る田んぼは、白いうるち米の田んぼとは離れた場所に作らなければならないのですが、うるち米ほど沢山使われるものではないため、どうしても少量しか作れません。
確かに味はおいしいけれど、正直言って割に合わない作物です。
しかも、この時お米の問屋さんが持ってきた黒米は農薬不使用のお米でした。
そういう手間ひまかけた栽培をしているのはがんこで、職人気質な人に違いない。
富士見堂も、今では珍しくなってしまった、生地から作ることにこだわりを持って煎餅づくりをしています。
がんこ×がんこで、是非この黒米を「うまい!」煎餅にしたいと思いました。

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試行錯誤を繰り返して誕生した黒米揚げ

そうと決めたら研究です。
まず、どんな味がするのだろうと、通常のお米と同じように炊いてみました。
炊飯器の蓋をゆっくりと開けると、こんな香りの良いお米あったのだろうかと、思わず感嘆の溜息が漏れてしまうくらい、なんとも良い香り。
ふっくらと炊きあがった黒米は「うまい」の一言に尽きます。

ところが、これを通常通りの工程で煎餅にしてみようとすると、使用する機械や網の木枠などが真っ黒になってしまいました。
色素が非常に強いため、草木染めの要領で染まってしまうのです。
これでは、他の煎餅を作る時に色がついてしまうし、黒米だけでは色も濃すぎるので、白米のうるち米を混ぜてみようと考えました。 試作を繰り返すうち、黒米にも「うるち米」と「餅米」があることがわかり、煎餅にするには餅米の方が風味が良いことを発見したのですが、餅米のみで作ると弾力が強くて生地が伸縮し、延(の)して型を抜いたあと、大きさがまばらになってしまいます。
大きさがまばらだと、焼いたり、揚げたりする時にムラができ、おいしい煎餅になりません。
そのような理由から、白米のうるち米と黒米の餅米をブレンドすることにしたのですが、その加減が難しいのです。
何度も何度も試作を繰り返し、ようやく一番おいしい状態で仕上がる割合を見つけたときには、思わず「やった−!」とみんなで声をあげて喜んだほどです。

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「自然のもの」を生かす職人の技

自然のものというのは生物にしても植物にしても、二つとして同じものはありません。
長い間お米という自然の恵みを生かした煎餅づくりを続けてきてもなお、お米の顔色を伺いながら、お米と会話をしながら、日々職人という仕事の奥深さを感じています。

黒米は栽培が非常に難しいため、時には全く色が付かない状態で収穫を迎える年もあります。
味や風味が強いことから、年や収穫した地域による違いがより大きく感じられる作物で、扱いは大変です。
ですが、そこが職人の腕の見せどころ。
収穫できたお米には、農家の方々の想いが詰まっています。
1粒1粒が大事なお米だからこそ、その良さを存分に生かした製品を作りたいという職人達の想いもあります。
もちろん、お客様にお届けするものですから味がブレてしまってはいけません。その時の気候や気温によってちょっとずつ味の違うお米を、焼く時の火加減だったり、乾燥具合いを調節しながらできる限り同じ味に仕上げていきます。
化学調味料等を使うと同じ味に仕上げる事は簡単ですが、富士見堂が目指すのは、あくまでもお米の味がする煎餅。ごはんとして食べてもおいしいお米をあえて煎餅にしていますので、お米の風味を最大限に生かしたい。
職人達は長年培ってきた感覚で富士見堂伝統の味に仕上げていくのです。
「職人の感覚」というと、ちょっと硬いイメージがあるかもしれませんが、味付け無しでも本当においしい素材に、人の手を少しだけ加えることで、その素材の持つ魅力を更に引き出すお手伝いをしているのです。

黒米づくりにあえてチャレンジする農家の方の心意気と、何よりこのうまさを伝えたいという富士見堂の職人達の努力はこれからも続きます。

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